志野は2004年にデビューしたおひなさまです。
台や屏風、あかりに美濃和紙を大胆にあしらい、
美濃焼の代表的な「志野」を表現しました。
名古屋市の業者様向けの共同見本市でお披露目しましたが、
それまでなかった斬新なおひなさまに、人だかりが絶えなかったのを覚えています。
その後、1年もたつと、様々なメーカーから、同じような志野や織部のような和紙のあかりが次々と出てきました。
でも、私はただのデザインでこのおひなさまを作ったわけではありません。
美濃和紙のあたたかい肌触りを通して、
志野焼に感じる日本の美意識のオリジナリティーを表現しています。
そしてそれは、やさしくて、あたたかいだけではない、芯の強さを持った
ちょうど、日本の女性のようだと思っています。
桃山時代は、茶道が花開いた時代です。
志野はそんな時代の代表的な名陶で、
白いツブツブのある表面と、ところどころにある紅色や
ピンク色がなんともやさしく、あたたかい気分にさせてくれる器です。
少しいびつなかたちも土の感触が残っているようです。
土を土のままで愛でるというか、包み込むというか、
自然に現れたかたちを大切にするような。
おひなさまで志野を表現する時、
屏風には美濃和紙を使いました。
厚い原紙に春雨という技法でつぶつぶを描き、
コウゾの繊維を使って素朴な春の景色を描きました。
美濃焼の窯元には、同じ柄の特別なミニ茶碗を作って頂きました。
志野のような、そして、雛のような女の子に育つことを願って…